なぜか推しが追ってくる。
「心配しなくても、別に辞めたりしないよ。楽しく思えなくてもやりがいはあるし」
「でも……」
「さあ、そのパネル色塗るんでしょ? 俺も手伝っていい?」
「あ、うん。もちろん」
その話題を無理やり終了させるかのように、恭くんは準備してあった筆を手に取った。
……わたしが無責任にキャーキャー言っていた裏で、恭くんがどんな思いで演技をしていたのか。全く考えたことがなかいわけではない。
「あの頃からは変わったように見えたんだけどな……」
無意識に出た呟きは、色塗りに集中し始めた恭くんに届かなかった。