【コミカライズ企画進行中】透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜
「デイヴィッド殿下……!」

「王国に光があらんことを」

「まさかデイヴィッド殿下が来て下さるなんて!信じられないわ」

「アピールするチャンスよ!!」

「なんて麗しいの……」


デイヴィッドは壇上にある椅子に座って、優しそうな笑顔を浮かべている。
姉や妹と同じように煌びやかな格好をした令嬢達は熱い視線をデイヴィッドに向けている。

その後に黒髪で赤い目をした不思議な青年が階段を上がると会場は先程の熱が嘘のように静まり返った。
気だるそうに椅子に腰掛けた青年は頬杖をついている。
周囲からは「ブ、ブルックス殿下よ……!」「怖いわ」と、デイヴィットとは反対で彼を恐る言葉が次々と漏れていた。


「…………早く続けろ」


ブルックスの低く不機嫌そうな声が静まり返ったホールに響く。
水晶玉を持っていた神官の男性は慌てて紙を持ち、咳払いをして名前を呼んだ。


「──ハリエット・ディストン様、シャルロッテ・ディストン様、イーヴィー・ディストン様」


名前を呼ばれて、ビクリと肩が跳ねた。
あの水晶玉に手を翳せば何かが起きるかもしれない……そう思うと前向きな気持ちになれた。
ワクワクした気持ちで足を進めようとした時だった。
背後から声が聞こえて腕を掴まれた。


「アンタみたいな恥晒しが、デイヴィッド殿下や皆様の前に行くなんて許されないわ」

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