透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜

辺りを見回すと、広く綺麗な部屋に寝かされている事に気付く。
ここがディストン侯爵家の部屋じゃないのは確かだ。

恐らく魔力検査で倒れたまま運ばれたのだろう。
サイズの合わないドレスではなく、肌触りのよいワンピースのようなものに着替えさせられて、侍女につけられた傷も、鬱血痕も手当てしてある。

そんな時、扉を控えめにノックする音が聞こえた。


「シャルロッテ様……お目覚めですか？」

「…………あなたは」

「私はリーナですよ。デイヴィッド殿下からシャルロッテ様のお世話を申しつかりました」

「…………」

「ここはもう安全ですから……今はゆっくりとお休み下さいませ」


リーナの反応を見る限り、シャルロッテの事情は伝わっているのだろう。

(今からしっかりと地盤を固めて……アイツらを地獄に堕とす準備をするの)

着実に前に進んでいる。それだけは理解出来た。


「デイヴィッド殿下はこの国の王太子で、ブルックス殿下もそうです。ご存知でしたか？」

「…………いいえ。部屋の外に出たことがないので」

「そうですか……明日、殿下からお話があると思いますから」