【コミカライズ企画進行中】透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜

だが、以前は仕事を選んでもある程度はやっていけた。
今は積み重なった悪評とプライドが邪魔をして、誰も何も頼まなくなる。
それによく今まで侯爵でいられたのが不思議なくらいだが、必死に金を工面してはしがみついていたのだろう。

(……ディストン侯爵家が、こうしていれば金だって手に入るし公爵にだってなっていたかもしれないのに)

箱を開けると、煌びやかで輝く宝石が入っていた。


「こ、これを私たちにか……!?」

「本当にいいの?」

「えぇ、どうぞ。お父様とお母様に喜んでもらいたいもの」


宝石に目を輝かせている二人を見ながらシャルロッテはもう一度「受け取ってくださいませ」と言った。
恐らくお金に困っているのだとしたら飛びつくと思っていたが、分かりやすいほどに反応を示した。


ーーーコンコンッ


扉が叩く音が聞こえた。
どうやらハリエットとイーヴィーが来たようだ。

シャルロッテは口角を上げて「ハリエットお姉様とイーヴィーかしら」と言って嬉しそうにブルックスに話しかけた。

中に入って来たのは、記憶とは全く違うハリエットとイーヴィーの姿だった。
ハリエットの艶やかだったベージュの髪は肩程まで短くなり、目元も前髪が重そうである。
グレージュの瞳はどこか虚だった。

イーヴィーの自慢のチョコレートブラウンの長髪もゴワゴワしているようだ。
イーヴィーはシャルロッテの姿を見て大きく目を見開いた後に唇を噛んだ。
< 203 / 257 >

この作品をシェア

pagetop