【コミカライズ企画進行中】透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜

イーヴィーも現状を理解していないのか、まだ辛うじて残ってくれている侍女や使用人にも当たり散らす始末だ。
そして「ドレスを買って」「お茶会に行きたい」「デイヴィッド殿下に会いたい」と非現実的なことを言っては愚痴をこぼしている。

感情的になりやすく、こうして場の空気を読めずに粗相をしてしまう。
シャルロッテが居た時の感覚が抜けきらないのだろう。

危機感がないこの状況と家族にハリエットは絶望していた。

この六年で、ディストン侯爵家は完全に落ちぶれていた。
ハリエットは行き場のない苛立ちを抱えて困惑していた。

(どうして、こんな事になってしまったの？あの時、あんな事をしなければ今頃……！)

思い出すのは、まるで別人のようなシャルロッテの姿だ。
天使のように微笑んでいたシャルロッテは今はもう手が届かない存在だった。

それに六年の間、両親がシャルロッテに会いたいと言っても拒絶していたのに、どうしていきなり近づいてきたのか……ハリエットは不気味に思えて仕方なかった。

それにディストン侯爵家が困窮して追い詰められたこのタイミングでのシャルロッテの訪問。
王家との繋がり、名誉、金をチラつかせて父と母の気を引いて何をするつもりなのか。