【コミカライズ企画進行中】透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜
「静かに!」と言おうとしても声が出ない。
ただマウラをシーツに包んで抱き締めるようにして思いきり首を横に降った。
「コソコソと、何をしているかと思えば、やはりマウラか……!」
その声にマウラの肩が大きく揺れた。
「……ベルデルク伯爵には白髪の娘をやると言ったんだ。没落した貴族の娘であるお前を引き取って、働かせてやったというのに、まったく」
「今すぐシャルロッテから離れなさいッ!この恩知らずが」
ディストン侯爵に体を押されて床に倒れ込む。
シーツを剥がしてマウラの髪を掴んで扉へと引き摺っていく。
必死にマウラに向かって手を伸ばす。
マウラは必死に抵抗しているが、侯爵の手は離れない。
真夜中の屋敷に怒号と悲鳴が響き渡った。
「お前には相応の罰を与えねばなッ!」
「シャルロッテ……!シャル、逃げて……ッ」
「────!!!」
ぶつけた頭を押さえて、重たい体を持ち上げながら必死にマウラの側へと走った。
手を伸ばしたが間に合わずに目の前で閉まる扉。
ガチャリと音を立てて聞こえた鍵の音に膝から崩れ落ちた。
しかしシャルロッテは開かない扉を思いきり叩いた。
(ディストン侯爵からマウラさんを救わなきゃ……!絶対にマウラさんだけは)
シャルロッテは扉に椅子やランプを叩きつけて音を立てる。
「煩いぞッ!シャルロッテ……!」
「…………っ!!」
「静かにしろッ!」