【コミカライズ企画進行中】透明令嬢の報復〜絶望の炎と甘い闇〜
「シ、シャルロッテお嬢様……ベルセルク伯爵から贈られたドレスに着替えましょう」
「…………」
声がした方に向けてぐるりと首を動かした。
ギロリとその侍女に視線を向ける。
怯えるように肩を揺らす侍女はドレスを着替える為に震える指で手首の拘束を外した。
腕を持ち上げられるようにして椅子からフラリと立ち上がったシャルロッテは、徐に目の前にあったボトルの掴んで、鏡に向かって放り投げた。
───ガチャン!
鏡が砕け散る。
『本当に、これでいいの……?』
そんな言葉が聞こえた気がしたが鏡の中にいた純粋でちっぽけで小さな自分もそれと一緒に消え去ってしまった。
「きゃあああっ……!」
侍女から悲鳴を聞きながら椅子を持ち上げて部屋の中を壊していた。
騎士の制止も振り払ってもがいていた。
全て消えてしまえばいいと思った。
叫び声も出すことが出来ずに、壊れた椅子を振り回し続けていると、バタバタと遠くから聞こえる足音……。
「どういうことだッ!」
「旦那様、お嬢様がぁ……!突然、暴れ出したんですっ!」
「クソ……今日で終わるというのに」
そんな声も聞こえなかった。
ただこの部屋を、愚かな自分を消さなければ気が済まないのだ。
(消えろ、消えろ……全部、消えてしまえ)