冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 そして彼らの話に耳を傾け、微笑んだ。

 舞踏会で踊り疲れると、誰かしら、甲斐甲斐しく軽食や果実酒を持ってきてくれる。皆がレティシアの世話を焼いてくれた。相変わらず令嬢達に嫌われているけれど、殿方は親切になった。
 
 彼らに好かれるのに、何もミザリーのように美しくある必要はない事に気付いた。微笑んで話を聞いてあげればいい。それだけだ。しかし、己の髪色にはコンプレックスがあったので、少しパウダーをかけて色をつける。

「レティシア、忘れないで、君の婚約者は、僕なのだから」
 トレバーが赤くなってやきもちをやく。初めてのことでレティシアは有頂天になった。自分は愛されている。

 
 ◇


 今日の舞踏会はいつもエスコートしてくれるトレバーが、急な用事で欠席し、渋る義弟にエスコートしてもらった。彼は会場に入るとすぐにどこかへ行ってしまう。レティシアが相当嫌なのだ。

 だがきちんと役目は果たしてくれた。それに綺麗な彼と、こちらだってあまり長く並んでいたいと思わない。どうしても見劣りしてしまう。

 だから、ここからは一人で大丈夫。

 今夜も、ダンスを楽しもう。レティシアの元には早速ダンスのお誘いが舞い込んだ。
 しかし、ことはそう上手く運ばない。レティシアは、舞踏会の最中に怒りで青ざめた令嬢達に会場の隅に連れ出された。いつもそばにくっついていたトレバーがいないせいだ。

「私の婚約者に手を出さないでよ!」

 いきなり、熱い紅茶をかけられる。それもにこにこと笑いながら。相手はセバス家子爵令嬢アニスだ。周りはぐるりとドレス姿の令嬢に囲まれてしまう。さながら、煌びやかなカーテンのようで、その中でレティシアが苛められているとは誰も気付かない。仲良く話をしているように見えるだろう。

(年の近い同性は嫌いだ。みんな陰険で意地悪で)

「ちょっと、アニス様に謝りなさいよ。そして二度とヘンリー様に近づかないと誓いなさい! このあばずれ」

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