冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 ミザリーは、つかつかとレティシアに近づいてくると、アーネストから受け取ったハンカチを奪うように取り上げた。そんなミザリーの様子にどきりとする。

「まあ、レティシアなんてこと!」

 ミザリーはドレスの染みに驚き、レティシアの前に跪く。すぐさまドレスのシミをハンカチで拭いはじめた。

「お姉さまのドレスが汚れてしまいます」

 レティシアは慌てて止めた。折角のミザリーのドレスが汚れてしまう。

「大丈夫よ。紅茶の染みに比べたら、これくらい。このドレスはあなたのお気に入りでしょう?」

 そう、レティシアの大好きな空色のドレス。ミザリーはそれを知っていて、一生懸命シミを取ろうとしてくれる。きっと先の冷たい視線はレティシアに対してではないのだ。令嬢達に苛められたことを察したのだ。彼女たちは、ミザリーの友達でもあるのだから、ショックだったのかもしれない。

 レティシアは、こんなにも親切なミザリーを疑ってしまった自分を恥じた。




 ◇


「レティシア、今度、街で評判のカフェに行ってみようよ」
「本当、とっても行きたかったの! 嬉しい」

 トレバーと二人で街に行くのは初めてだ。あの悪夢の中ではこんなことはなかった。彼に愛されている。レティシアはそんな幸運を味わった。


 最初から二人の関係は順調だった。つまりあの顔合わせの日から。婚約が決まると、ほぼ二週間に一度トレバーは、レティシアの家を訪れ、サロンで一緒に茶を飲んだ。

 彼はいつも彼女の為に菓子や花束を持ってきた。時にはそれが、髪飾りだったりブローチだったり、様々なプレゼントを貰う。

 しかし、今までミザリー以外とコミュニケーションをとってこなかったレティシアは彼と何を話していいのか、わからない。

 だから、彼の持ち物を褒め、「花がとても素敵」、「この間貰ったブローチがとても気に入っているの」などとにかく感謝の気持ちを伝えた。

 これは、ミザリーが人に接するときの態度だ。人との付き合い方が分からないレティシアは最初ミザリーの言動を模倣した。

 そしてトレバーはレティシアを大切にしてくれる。そのうちレティシアは模倣をやめて、彼とのびのびと付き合うようになった。

 そして、婚約が決まってから半年後にブラウン家のタウンハウスに招待された。

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