冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「いま、バートン先生と今日きていた学園の研究者で現場保存と検証をしている。それとこれから王宮から役人と兵士が来る」

 ある予感があった。

「呪いなの? ニーナ? それともお姉さまが?」

「どちらかだ」

 絞り出すような声、辛そうな表情。おそらく呪いを発動したのはミザリーだ。彼はそれを知っている。

「お姉さまは無事なの?」

 レティシアが震える声で聞く。自分が当事者なのだから教えてほしい。するとリーンハルトにぎゅっと抱きしめられた。

「大丈夫だから、レティシア」

 優しく背中をさすられた。そうしていると少し気持ちが落ち着く。繰り返しの中でリーンハルトが苦手なこともあった。でも一貫して彼だけは信頼できる。レティシアはゆっくりとリーンハルトの胸に頭を預けた。温かく大きな手がレティシアの頭を撫でる。

 その後、結局レティシアはサロンへ連れていかれ、リーンハルトはミザリーの部屋に戻った。落ちつかない気持ちで紅茶を飲んでいると玄関のほうが騒がしくなる。

 夜更けだというのに、官吏二人に憲兵二人、魔法師三人と騎士が数人来た。
レティシアは魔法師と騎士に守られ、サロンに足止めされた。「呪い」の検証にはバートンにオスカー、リーンハルトも立ち会うという。

 レティシアの周りにはいま魔法師たちにより結界が張られている。呪われたのはレティシアで決定だ。ミザリーの部屋にはレティシアの名前が刻まれ、レティシアの持ち物数点と髪の毛があったという。そういえば三日ほど前にリーンハルトから貰った羽ペンが消えていた。

 しかし、レティシアが生きているということは何らかの事情で呪いが失敗したということだ。失敗すれば、呪術者の呪いは自分に返って来る。


 自分がなぜ助かったのかさっぱりわからなかった。


♢♢♢



 その後、レティシアは王宮内で秘密裏に保護されることになり、魔法師に守られ指定された敷地内から一歩も出ることが許されなかった。
 
 事件から半月後、憔悴しきったリーンハルトが王宮へ面会に来た。

「リーンハルト、大丈夫?」
「ああ。レティシア、少しやつれたな。きちんと食べているのか?」
 この状況で食事などほとんど喉を通らない。

「ひとのこと言えないでしょ? 家族は無事なの?」
 リーンハルトの口元がゆがむ。

「生きているという意味でなら」
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