冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 レティシアは少し泣いてから、お茶を飲むと落ち着いた。

「ねえ、リーンハルト。どうして精神操作を受けているって気付いたの?」
「違和感があったから。それに子供の頃もおかしいとは思っていた。前日まで仲良く遊んでいたし。
 だいたいレティシアと仲良くなるのに、二週間近くかかった。幸いレティシアは甘いものをあげるとすぐ懐いたけれど」
「その言い方やめてよ」
 レティシアが赤くなるとリーンハルトがくすりと笑う。実際彼はおやつをよく分けてくれていた。姉弟なのだから、普通逆だと思う。

「あの頃は俺の勉強が終わるの待ってて可愛かった。ドアを開けると待ちくたびれたレティシアが廊下でうたた寝していたこともあったな」

 おぼろげながら覚えている。あの時は「レティ、風邪引くよ」と頭をなでて起こされた。そして次からは「勉強終わるまで大人しく待っててね」と部屋の中に入れてくれた。

「ちょっと、ほんとにもういいから」
 仲が良くても悪くても、結局義弟に世話をかけているようで恥ずかしい。
 レティシアが真っ赤になって俯くと、リーンハルトがコホンと一つ咳払いをする。

「言い訳になるから、あまり言いたくはないんだけれど。討伐隊に参加したとき、実は前日ではなくもっと前にレティシアに言うつもりだったんだ。父上と母上に言われて僕なりに考えて。
 ところがミザリーに言われた一言で黙っていることにしたんだ。そんなことは初めてだ。今まで大して考えもせず急に気が変わるなんて事あまりなかったから。
 後から随分と悔やんだ。それから、討伐隊でレティシアのループの話を聞いて、こっちに戻ってから調べ始めた。王宮に臨時だけれど職を持っているから、結構深い書庫まで入って行けたんだ」

「リーンハルト、調べてくれてたの?」
 彼が苦笑する。

「調べたわりには後手に回った。どうしてもループの説明がつかなくてね。まあ、結局アーティファクトが原因だってことになったけれど」
 リーンハルトが紅茶を一口飲む。もう冷めていることだろう。

「うん、とりあえずはループから抜けてよかった。実際困ったのよ。ミザリーに陥れられたり殺されたりするから、次戻ってきたら仕返ししたいと思うのだけれど。
 でもそのミザリーは私を殺したいほど憎んでいるのか分からない。その上まだ罪を犯していないし、これから罪を犯すかもわからない」

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