冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「まさか、なりすましだと思っているの?」
「ああ、父上とも母上とも話した。本物のミザリーは金髪なのだと思う。そうでなければ染めるなんてありえない」
 リーンハルトが眉根を寄せる。

「どうするつもりなの?」
「ミザリーの母国に行こうと思う」
「リーンハルト、私も行く」
 リーンハルトがふわりと微笑む。

「いいけれど場所知っているの? アラスタ王国は遠いよ。ここから馬車と船を使って片道ひと月はかかる」
 それを聞いてレティシアは不安になった。

「なんかそれ、すでに見つからない気がしてきた。ねえ、本当に行くつもり? あなた学園も仕事もどうするの? せっかくキャリアを積んでいるのに」
 本格的に彼が心配になってきた。

「別に代わりならいくらでもいるさ。帰ってきてから父上に使われるのもいいし。それに気になるじゃないか?」

「私がいるでしょ! 姉に任せておいて!」
 世話になったシュミット家の為に一肌脱ごうと思った。リーンハルトはこれ以上巻き込まれるべきではない。元々恨まれたのはレティシアなわけだし。

「冗談でしょ? レティシア一人で行かせて攫われでもしたらどうするの? また事態がややこしくなるだろ。俺が行く」
「なんでそんなに信用ないのよ。私だって討伐隊にいたのよ。後方支援としてだけれど」
 リーンハルトはどうして保護者のような口を利くのだろう。

「まあ、今回のミザリーの事は俺たち家族がレティシアに申し訳ないことをしたわけだけれど」
「そんなことはないわ! もとは私が彼女に恨まれたからでしょ? それに私だって家族よ」
「いや、そうではなくて、レティシアは薄々犯人を知りながら毎回してやられたわけだし」
 相変わらずはっきりものを言う義弟。
「……」
 全くその通りで、返す言葉が見当たらない。

「俺は十日後に出発するつもりだ。その間に身辺整理をしていく。で、レティシアどうする?」
「行く! 絶対に行く! リーンハルトは伯爵家嫡男だし、攫われて身代金要求されても困るものね」
 レティシアが精一杯の虚勢を張ると、リーンハルトが噴き出した。

「レティシアそれでやり返しているつもりなの?」
「言ってなさい! 私すっごく役に立つから」

「わかったよ。一緒に行こう」
 そういってリーンハルトはレティシアの頭を撫でた。

 頭を撫でられると認められたような気になるが、そう思う時点で姉弟がすでに逆転している。レティシアは密かにため息を吐く。

 彼のたった一人の姉になってしまったのだから、頑張らねば。

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