冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
あらたな人生 旅立ち
結局今回のミザリーの一件は伏せられ、関係者以外は知る由もなく、シュミット家には何のお咎めもなかった。
レティシアはそのことに胸をなでおろした。義父や義弟の今までの功績や、調査に協力的だったことも関係している。また、ミザリーとは血のつながりがないということも一つの要因となった。
そして浮上したミザリーの偽物疑惑。本物のミザリーは国を出る前に魔力判定を受けていたのだ。魔力なしの結果を携えてこのラクシュア王国にやって来た。それが急に強力な闇魔法持ちになるなど考えられない。
面会から戻った次の日、サロンで家族会議を開いた。レティシアはオスカーから、ミザリーを引き取った経緯を聞く。
「若い頃、遠方のアラスタ王国に留学していた時期があってね。その際世話になったミザリーの父ドーソン男爵とは友誼を結んだ。
彼が病気で亡くなり、その後相次いで御不幸があってね。ドーソン男爵家の血縁者もいないというから、家で引き取ることにしたんだ。この家にミザリーが来るまで会ったことがなかった。当時会っていれば状況も変わったかもしれない」
家督を継いだ身で、遠方の国まで往復二ケ月かけて会いに行ったり、迎えに行ったりするのはほぼ不可能だろう。
「それからレティシア、形見の指輪の件でミュラー家から連絡があってね」
「はい」
何かわかったことでもあるのだろうか。少し緊張し、レティシアは居住まいを正した。
「あれはミュラー家の家宝だったらしい」
「え! もう壊れています」
確かミスリル製だと言っていた。考えてみたら値段がつけられない程高価なものだろう。弁償しろと言われたらどうしようとレティシアは青くなる。
「ああ、いや、そういうことではなくて、指輪は持ち主を選ぶそうだ。今まであの指輪の力を発揮できた者はいないらしい。つまりお前は指輪に選ばれた。だからレティシアの好きにしていいと言っていたよ」
「そうなんですか」
驚くやら、ほっとするやら、レティシアは胸をなでおろした。