冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 
 レティシアは日々を楽しんだ。あの悪夢から逃げるように。
 そして彼女の目論見通り記憶は薄れていった。


 ◇


 幸せな時間が続き、レティシアは十七歳になった。
 
 そんな幸福に水を差すようなことが起きる。
 
 ブラウン子爵夫人がトレバーとレティシアの婚約に難色を示し始めたのだ。周りに愛嬌を振りまいたせいか、浮気性なのではないかと心配し始めたらしい。

「大丈夫です。将来、浮気の恐れのあるのはあなたの息子です」と言ってやりたかった。あの夢が本当ならば……トレバーと破談になれば、レティシアが死ぬ確率は低くなる。

 だが、トレバーを好きになっていた。愛とは違うのかもしれないが、情はある。

 彼は礼儀のなっていないレティシアにとても優しく接してくれた。そのうえ細かいことは言わないし、金持ちだ。レティシアが欲しいと言えば何でも買ってくれる。

 リーンハルトのように叱らず、
「仕方がないよ。レティ、人には向き不向きがある。君は君のペースで成長していけばいい」
と言ってくれる。

 あの恐ろしい夢と比べれば、彼の優しさは雲泥の違いで、彼はとてもいい人だ。


 しかし、リーンハルトだけは、なぜかとても辛らつで。

「遊びまわっている暇があったら、マナーや教養を身につけたらどうだ」

 何という事だろう。トレバーは物を知らないレティシアを可愛いと言ってくるのに。この義弟は勉強しろと言う。もの知らずな娘が好きな殿方は多い。義弟はそれをわかっていない。

 いや、単にレティシアが嫌いなのだ。そんな義弟に微笑みかけるなんて真っ平。別に前回、関わりのなかったリーンハルトには好かれなくても構わないと思っていたので無視をした。それに彼はいつも学校や勉強で忙しいので家にいない。


 その後もレティシアはお誘いがあれば必ず夜会に参加し、楽しい時を過ごした。
 
(神様は間違えたのかもしれない。私は、あのような悲惨な死に方はしない。それともやはり警告?)
 
 レティシアの心の片隅には不安があった。

< 15 / 159 >

この作品をシェア

pagetop