冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
レティシアが立ち上がる。すると義弟が驚いたように目を瞬く。
「え? 疲れたろう。お茶でも飲んだら? 随分歩いたし、少し休むといい」
確かに疲れているし義弟の気遣いは嬉しいが、こんなところで時間を食うわけにはいかない。
「リーンハルト、気を遣わなくていいのよ。私が淑女だというのは忘れて。さあ、急ぐわよ!」
「淑女? 思ったことないから安心して」
と言ってリーンハルトがにっこり笑い、茶に口をつけた。
その後、二人はくだらない言い合いをしながら宿を出て修道院を目指した。長旅のお陰で気まずさもなくなり、二人の仲はすっかり戻っていた。
♢
幸いそこには十年以上勤めている修道女が多く、ミザリーの子供の頃の姿絵を見せると数人が覚えがあると言った。
「ああ、綺麗な子だったから覚えています。でも髪を金髪に染めているのね」
ヘザーと名乗る年配の修道女が答えた。彼女は宿屋の主人と同じで共通語が話せるのでレティシアも一緒に話を聞いた。
「はい、元は黒っぽかったようです」
とリーンハルトが答える。
「うちに併設されている孤児院にいた子で間違いないと思います」
「ミザリーと名乗っていたのですが」
と言って、リーンハルトがかいつまんで差しさわりのない程度に事情を話す。
「違うわ。彼女はアンといって孤児です。ミザリー様が半年ほどこちらの修道院に預けられた時とても仲良くしてました。でも、どうしてそんなことに? アンはもともと貧しい家の出で姓も持ちません。母親が死んでこの孤児院に来たんです」
驚いたように言うヘザーに、リーンハルトとレティシアは顔を見合わせた。これであの「ミザリー」が偽物だったとはっきりした。美しく優雅だったミザリーが姓も持たぬ最下層の娘。
――「分不相応」あれは誰に向けられた言葉だったのだろう。
◇
二人はその後二日ほどかけて街でミザリーとアンについて聞いて回った。分かったことはアンの亡くなった母親が流れ者で、この街で占い師をやっていたこと。そしてアンの父親は誰ともわからないという事だった。そのほか、アンの母親は逃げ出してきた奴隷ではないかという噂まであった。
そしてミザリーはドーソン家の使用人に連れられてラクシュア王国へ旅だったと……。
「え? 疲れたろう。お茶でも飲んだら? 随分歩いたし、少し休むといい」
確かに疲れているし義弟の気遣いは嬉しいが、こんなところで時間を食うわけにはいかない。
「リーンハルト、気を遣わなくていいのよ。私が淑女だというのは忘れて。さあ、急ぐわよ!」
「淑女? 思ったことないから安心して」
と言ってリーンハルトがにっこり笑い、茶に口をつけた。
その後、二人はくだらない言い合いをしながら宿を出て修道院を目指した。長旅のお陰で気まずさもなくなり、二人の仲はすっかり戻っていた。
♢
幸いそこには十年以上勤めている修道女が多く、ミザリーの子供の頃の姿絵を見せると数人が覚えがあると言った。
「ああ、綺麗な子だったから覚えています。でも髪を金髪に染めているのね」
ヘザーと名乗る年配の修道女が答えた。彼女は宿屋の主人と同じで共通語が話せるのでレティシアも一緒に話を聞いた。
「はい、元は黒っぽかったようです」
とリーンハルトが答える。
「うちに併設されている孤児院にいた子で間違いないと思います」
「ミザリーと名乗っていたのですが」
と言って、リーンハルトがかいつまんで差しさわりのない程度に事情を話す。
「違うわ。彼女はアンといって孤児です。ミザリー様が半年ほどこちらの修道院に預けられた時とても仲良くしてました。でも、どうしてそんなことに? アンはもともと貧しい家の出で姓も持ちません。母親が死んでこの孤児院に来たんです」
驚いたように言うヘザーに、リーンハルトとレティシアは顔を見合わせた。これであの「ミザリー」が偽物だったとはっきりした。美しく優雅だったミザリーが姓も持たぬ最下層の娘。
――「分不相応」あれは誰に向けられた言葉だったのだろう。
◇
二人はその後二日ほどかけて街でミザリーとアンについて聞いて回った。分かったことはアンの亡くなった母親が流れ者で、この街で占い師をやっていたこと。そしてアンの父親は誰ともわからないという事だった。そのほか、アンの母親は逃げ出してきた奴隷ではないかという噂まであった。
そしてミザリーはドーソン家の使用人に連れられてラクシュア王国へ旅だったと……。