冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 宿に戻るとレティシアはくたくただった。二人は宿屋で簡単な食事をすませ茶を飲んだ。

「占い師ということは闇属性よね」

 ミザリーと名乗っていた者がアンという名の庶民だった事は分かった。

「ああ、親の属性をある程度引き継ぐからね。そのうえミザリーがこの街を立ち去った日にアンが行方不明になったとはね」

 リーンハルトの瞳が翳る。

「行方不明になったのは、本物のミザリーよね。彼女どうしているのかしら……」
 覚悟はしていたが、気持ちが沈む。

「恐らく無事ではないだろうね。生きているとしたら、名乗りを上げているはずだ。どこかで入れ替わったんだろう」
 彼が微かに眉間にしわを寄せる。

「リーンハルト、気になるの?」
「ああ、だが、そう簡単に分かるとは思えない。もう十年以上も前の事だ。ミザリーを乗せた馬車の御者を見つけ出したとしても何も覚えちゃいないだろうね」
 リーンハルトが残念そうに言う。 
「シュミット家はどこまで彼女を迎えに行ったの?」
「ラクシュアの港についたミザリーを引き取っただけだ。アラスタ王国の地は踏んでいない。入国したときにはすでにアンがミザリーに成りすましていた」

「なんてこと……。じゃあ、そのドーソン家の執事はアンと組んでいたの?」
「それか執事が偽物か。どのみち大人の協力が必要だろう。レティシア、これから先も調べてみるか? ミザリーとアンの足取り」
「私はもう十分な気がする。偽物の確証も得たし。リーンハルトは?」
 
 義弟には早く自国に帰って欲しい。折角のキャリアがもったいない。討伐隊でケガもしたし、死ぬような思いもした。そうやって得た功績だってあるのに。

「納得してはいないけれど。これ以上時間をかけるわけにもいかないしな。帰ろう」
 それを聞いてほっとした。

「結局、どこで入れ替わったかわからなかったね」
 レティシアはすっかり冷めきった紅茶に口をつける。

「俺はここで入れ替わった確率が高いと思う」
「ドーソン家の執事がラクシュアの港まで送って行ったのよね? ミザリーじゃなくて、アンは馬車に潜んでいて船で入れ替わったのかも」

< 153 / 159 >

この作品をシェア

pagetop