冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「はあ? ……あなたまさか宿屋で言ったように面倒くさくなって。それで売約済みなの?」
 レティシアは慌てた。今世の彼は驚くほど図太い神経の持ち主に成長していた。

「鈍いな、レティシアは。器量のいい光魔法師は人気があるから、俺、ずっと外堀うめていたんだけれど。そうしないとレティシアはトレバーとか、どこの誰かも分からない奴とすぐに婚約してしまうから」
「え?」
「父上と母上から許可は取ってある」

 彼の言っていることが、すぐには分からなくてレティシアは瞳を瞬く。
 するとリーンハルトが柔らかく微笑む。それはレティシアが初めて見る大人の男性のもので、どきりとした。

 彼はすっとレティシアの前にひざまずき、一本の赤いバラを差し出す。
「レティシア、私と結婚してください」

 突然の申し出にレティシアの頭の中は真っ白になる。
 しかし、次の瞬間差し出されたバラを取るのも忘れ、膝をついて彼にしがみ付き子供のように泣きじゃくった。

「うん、ずっとずっと一緒にいよう。リーンハルト、今度は私より先に死なないでね」
「わかった。努力しよう。レティシア愛してる。絶対に幸せにするから」

 リーンハルトは笑ってレティシアをぎゅっと抱きしめた。


 ――いつの頃からは分からないけれど、ずっと彼が好きだった。もう二度と失いたくない。


「リーンハルト、あなたが大好き」


 レティシアの止まっていた時がやっと未来へと動き出した。





Fin 


















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