冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 
 早々に買い物を済ませ、馬車に乗りこもうとすると、

「レティシア嬢ではないですか?」

と声をかけられた。

 往来の向こう側にアーネストが立っていた。すらりとした立ち姿、帽子を取り、品よく挨拶し、優しく微笑んでいる。

 偶然の出会いにレティシアは驚いた。

「まあ、アーネスト様、偶然ですね。どうなさったのです?」

 穏やかで気遣いの出来る彼が好きだ。それにリーンハルトやトレバーのように気位の高いところがない。少しどきどきする。

「いま、買い物をすませたところでね。君は?」
「私も、今日は刺繍の材料を買いに来たのです」

 アーネストに会えたことは純粋に嬉しかった。濃茶の髪も瞳も優し気で、少し年上だが、若々しく気さくな雰囲気で親しみやすい。

「そうだ。ここで会ったのも何かの縁だろう。一緒にカフェに行かないか?」
「え?」
「私もちょうど用事がすんだところで、コーヒーが飲みたくなってね。君は義妹になるわけだし、よかったら」
 そういって未来の義兄が微笑む。

「ニーナ、あなたは、先に馬車に乗って、帰っていて、私はアーネスト様に送っていただくから」
「お嬢様、それはいけません」

 ニーナがぎょっとしたような顔をして、慌てて止める。

「どうして? アーネスト様はお義兄様になる方よ? 一緒にお茶を飲んではいけないの?」

 レティシアは心底、不思議そうに首を傾げた。家同士のつながりを考えても親しくしていた方がいいはずだ。



< 17 / 159 >

この作品をシェア

pagetop