冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 痛いところを突かれて唇を噛む。リーンハルトは意地悪だ。
 ちゃんと同性にだって笑いかけている。
 しかし、最初のお茶会のイメージが尾を引き、彼女たちには無視されるか、未だにいじめられていた。

「それは……私、彼女たちに意地悪されるから。あの子たち、すごく意地が悪いんだから! だから、大嫌い!」

 悔しくて叫んだ。しかし、本当は令嬢たちとも上手くやりたかった。しかし、レティシアにはその方法がわからない。

「馬鹿かお前は!」
 
 売り言葉に買い言葉で義弟と喧嘩になってしまった。いつもは彼の方がレティシアを無視をして馬鹿にして終わるのに、今日は異様に絡んでくる。

「リーン、もう、その辺にしておいたら、レティシアはいま、お父様に叱られたばかりなのだし。それに偉い方や、殿方には好かれているのだから、いいんじゃないかしら」

 ミザリーの声が割って入った。

「姉上、そのフォローはどうかと思う」

 リーンハルトが冷たく言い放ち、レティシアを睨みつけると踵を返して行ってしまった。

「ありがとう、お義姉様」
 
 レティシアはミザリーに駆け寄った。正直彼女が来てくれて助かった。本当にリーンハルトは苦手だ。

 こちらが笑いかけても彼はニコリとすらしないし、たいてい無視される。一つ年下の義弟は最近背も伸びて、体も大きくなってきて怖い。子供の頃は天使のように可愛らしかったのに。

 それに比べて、ミザリーは思いやりがあり上品な人だ。
 そこでふと違和感に気付く、昔見た悪夢がまた生々しく頭の中で再生される。そうだ。ミザリーはもうとっくにアーネストと結婚していたはず。それがまだ未婚で家にいる。

(どうして?)

 突然鮮やかによみがえった記憶にレティシアの頭は混乱する。

「大丈夫? レティシア」

 ミザリーが心配してレティシアの俯いた顔を覗き込む。その後ろにニーナが控えていて……。
 
 牢獄での記憶がよみがえる。それを慌てて振り払う。

 レティシアは弱々しい笑みを浮かべ、ミザリーの言葉にコクリと頷く。

「ねえ、お庭で一緒にお茶を飲まない? バラが見ごろだわ」

 義姉の魅力的な提案にレティシアの心が揺れる。

「え? でも、私お勉強をしなくてはならないから。そうしないとトレバーと結婚できなくなっちゃう」
「そんな辛そうな顔をして……。気分転換しましょう」

 ミザリーがにっこりと笑う。それもそうだと思った。

 部屋に帰って勉強しようとしても、きっとリーンハルトの腹立たしい生意気な顔が浮かぶだけだ。気分転換は大事。レティシアは馬鹿な悪夢が消えるように頭を振った。
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