冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「ねえ、私、あなたに伝えたいことが……」

 するとミザリーが、鼻にしわを寄せる。

「臭い」
「え?」

 レティシアはどきりとして後退りした。ずっと風呂に入っていないし、体も清めていない。するとミザリーが楽しそうに笑いだす。暗くじめついた牢獄にそぐわない、明るい声で。だが、それはいつものような天使の清らかな笑みではなく侮蔑が込められた下品な笑い。

「ふふふ、驚いた? ニーナは私の指示で動いていたのよ」
「え?」
 
 ミザリーはいったい何を言っているのだろう? さっぱり分からない。

「あんたみたいな、汚れた血と姉妹になった私の身にもなってよ? お父様も酔狂よね。いったいなんの慈善活動? もっと早く、こうなれば良かったのよ」

 汚れた血、レティシアの亡き母は貧民で、下町の酒場で働いていた。もちろん、その事実は厳重に隠されている。実家の家族しか知らない秘密。

「何をいっているの、ミザリー? どうしてしまったの? あなたは私から夫を奪ったのよ!」
 
 ミザリーは、レティシアの夫と恋仲になるまで、完璧な淑女だった。それがどうして? 頭が混乱する。いつでも優しく親切で寛容だったミザリー。

「かわいそうなレティシア、あなたを愛する人は誰もいないわ。トレバーはね。あなたと結婚する前から、私を愛してくれていたのよ」
「嘘、嘘よ!」

 レティシアは膝から崩れ落ちた。そんな彼女を牢番がずるずると刑場まで引きずって行った。

 いやだ。こんなことで死にたくない……。いったい何がどうなっているの?
 どうして死ななきゃいけないの?




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