冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「いえいえ、私など、貰ってくれる先はありません」
「あら、どうして私の妹じゃない。私に任せくれればいいのよ」

 なぜ、こんなにも積極的なのだろう。

「そうそう、婚約が決まったら、あなたも学園をやめるでしょう? 淑女教育に精を出さなくてはならないからね」

 ミザリーはレティシアの学園行きが気に入らないのだ。彼女は自分で家庭教師を選んで学園には通っていない。それなのに、なぜ? 気に入らないのならば、彼女も通えばいいのに。レティシアよりもずっと優秀なのだから。

「まあ、婚約も決まっていないのに、学校にかようだなんて」
「しかも、貴族学校ではなくて、庶民もいるらしいじゃない」
「あなた養女でしょ? 早く結婚して、ご両親を安心させたいと思わないの?」

 口々にミザリーのお友達が言う。ご令嬢方には相変わらず嫌われている。こんなことでこれから先友達など出来るのだろうか。不安になる。
 オスカーもオデットも学園への入学をすんなり賛成してくれたから、これほど彼女達からの風当たりが強いとは思いもしなかった。

「まあまあ、レティシアは勉強が好きで学園に通うのよ。人にはそれぞれ向き不向きがあるのよ」

 ミザリーがいつものように困ったような笑みを浮かべ庇ってくれるが、皆に白い目で見られた。

「だいたい貴族の娘の役目は、結婚してより優位な条件で家同士の縁を結ぶことにあるのではなくて?」

 ミザリーの友人のセバス家子爵令嬢が言えば、

「そうよね。それでこそ、育ててもらった家に対するご恩返しよ。余分に学費を払わせて学園に通うなんてどうかと思うわ」

と明け透けにハワード家男爵令嬢に苦言を呈された。学費のことなど考えたことがなかった。どれくらいかかるものなのだろう。この家が金持ちだと知っているが、チクリと胸が痛む。

 前のレティシアならば、我慢できずに癇癪を起していたが、ここで癇癪を起こせば、きっとミザリーの思うツボだ。やはり彼女はどういうわけか、レティシアを嫌っている。関わりを持たないように気をつけてきたのに。なんで?

 レティシアは腹立ちを、ぐっと堪えた。






  ◇

「ねえ、リーン、今日は一緒に街中のカフェに行かない?」

 ミザリーがリーンハルトに声をかけると、書庫にいた彼は驚いたように目を瞬く。
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