冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
彼は学校が休みになり、家に帰って来たものの、ずっと書庫に閉じこもって勉強をしている。

「え、どうして俺と? 友達といけばいいじゃないか」
「あなたはいつも家にいないのだから、こんな時くらい姉弟で一緒にでかけてもいいでしょう」
「うん、まあ……。家のサロンや庭ではだめなの?」

 リーンハルトは勉強時間が減るのが嫌なのだ。ミザリーは淡く微笑む。


 結局、ミザリーが押し切り、二人は連れ立って、家から近いカフェに来た。
 メニューを注文するも、前に座ったリーンハルトは落ち着かない様子。二つ年下の弟は子供だと思っていたのに、いつの間に顔も大人びて、ミザリーより背が高くなっている。

「どうしたの? リーン落ちつかないようだけれど」
 
 注文したカフェオレとケーキが運ばれてきた。

「いや、あいつがいないと思って」

 そう言ってリーンハルトはカフェオレに口をつける。

「あいつって? 誰のこと」

 己の微笑が引きつって来るのがわかる。

「レティシアだよ」
「どうして?」

 ミザリーは金糸の髪をサラリと揺らし、心底不思議そうに首を傾げた。

「姉弟でって、いってたろ? あいつも来るのかと」
「呼んだ方がよかったかしら」
「いや、別に」

 リーンハルトはそっけない。この年頃の子はたいていそうだ。いつも伯爵家嫡男としてしっかりしているが、時折こうして年相応の一面を見せる。

「最近、レティシアと仲がいいのね。もしかして、好きになっちゃった?」

 リーンハルトが弾かれたようにミザリーを見る。それから、少し迷惑そうな顔をした。

「そういうことじゃない。ただ、あいつも、家族だろう」

 ミザリーは、弟のこういうところを残念に思うし、苦手だと思う。面と向かって、レティシアに文句をつけるのに、陰で悪口は言わない。

 彼は父オスカーに少し似ている。厳しいようでいて、博愛主義。潔癖な面があって、どんな嫌いな相手のことであっても陰口を好まない。そして相手が本当に困っていれば、手を差し伸べる。

「ねえ、こうやって二人で向かい合って座っていると、周りの人達に、私達ってどう見えるのかしら?」

 ミザリーは蠱惑的に弟に笑いかける。

「そりゃ、姉弟でしょ?」

 リーンハルトが淡白に答える。

「ふふふ、なんだか恋人同士みたいじゃない」

 すると彼は呆れたような顔をした。

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