冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「なにそれ、姉上は友達が多いのだから、男友達でも誘えば良かったじゃないか。皆喜んで来てくれるだろ」

 美しい姉弟は腹の底で通じ合うことなく、微笑み合う。

 リーンハルトはきっとレティシアが暴言を吐いたとしても心のそこから憎んだり、恨んだりはしない。彼女を助けることはあっても……。
 レティシアの事を怒っているようでいて、それはただ彼のプライドの問題であって。リーンハルトは公平でとても寛容。

「ねえ、どうして、レティシアに学園に行くことを勧めたの? あの子、勉強が嫌いなのに」

 するとリーンハルト小さくため息をつく。

「勧めたわけではないよ。本人が行きたいと言いだしたんだ。俺はバートン先生と父上に話を通しただけだ。そういうことはレティシアに直接聞いたら。俺にはレティシアの考えは分からない」

 そういって、彼は口を引き結ぶ。やはりそうなのだ。レティシアのために人に話しを通し、お膳立てする手間を厭わない。
 彼はただ面子あるから、怒っているふりをしているだけ、本当はとっくに彼女を許している。 


「わかった、そうする。でも私もそこまで興味があるわけではないのよ。ただ不思議に思っただけ」

 それから、話題はレティシアから逸れていった。

 
 ――リーンは私の味方にはなってはくれないの?
  
 あなたは知らない。博愛主義者は偽善者でもあることを。 





◇◇◇

 いよいよ新学期が始まった。今日から寮生活が始まる。
 レティシアは学校の受付で書類を受け取った。それにクラスと寮の部屋の鍵と今後の授業のスケジュールが入っているという。

 早速広いカフェテラスに行ってカフェオレを注文し、大きく張り出した窓のそばに座った。
 なんだかワクワクする。

 書類を開けてみると「F」という文字がでかでかと書いてあるのを見た。「F」って何? 要綱のページをめくって行くと飛んでもないことが書いてあった。

「嘘でしょ」

 彼女のテスト結果はダントツ最下位で光魔法の適性とバートンの推薦がなかったら、入学直後に退学になっているところだった。

 レティシアは恐怖に震える。

(私って、何度ループしても馬鹿なんだ)

 妙に納得しつつも、冷や汗をだらだらとかく。

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