冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 どういうわけか、今回はトレバーではなくアーネストがレティシアの婚約者候補のようだ。慌ててミザリーの顔を見るが、にこやかなばかりで、彼女の心は全く読めない。

 そして、次の週にはレティシアとアーネストの婚約は決まる。自活しようと決意した矢先の出来事で、戸惑いはあったが嬉しかった。決意は揺らぎ、あっという間に翻意した。そんな自分に少し呆れる。

 アーネストは前回、レティシアの憧れの人だ。ただ一つの懸念は、ミザリーだ。彼女はこの婚約についてどう思っているのだろう。


 相談相手はリーンハルトしかいない。学園では捕まえにくいが、家ならば彼の部屋に突撃するまでだ。

「お前……。何しにきたんだよ」

 リーンハルトが嫌そうな顔をする。彼は背も伸びて声も低くなり、随分大人になった。

「いえね。私の婚約の事なのだけれど」
「ああ、決まって良かったな」

 これは皮肉ではなく、祝福してくれている。彼のアイスブルーの双眸はいつもより温かい。レティシアが嫌いなくせにそういうところは育ちがいいせいか素直だ。

「そうじゃないのよ。ほら、お姉さまはどなたと婚約されるのかと思って」
「え? もしかして、姉上より先に婚約したことに気がひけるのか?」

 やはり、ミザリーの婚約相手は決まっていないのだ。その事実知った途端どきどきと心臓は早鐘をうつ。

「お姉さま、あれほど美しいのに、なぜ婚約者がいらっしゃらないの?」
「そんなこと、どうして俺に聞く?」

 リーンハルトは少し迷惑そうに眉間にしわを寄せる。

「本人に聞くほどデリカシーがないわけじゃないわ」
「なるほど」
「で、どうしてなの?」
 
 いやいやながらも教えてくれた。

「実は姉上にも少し前に婚約の話があったのだが、本人が乗り気ではなくてね。いま暗礁に乗り上げている」

「え? 何か問題のあるお方なのですか?」
「いいや、俺はそう思わないし、父上もそうは思っていないが、姉上は相手の家格が気に入らないらしい」

「どうして? もしかして、お姉さまはアーネスト様がご不満で、それで私に回って来たの」
「お前、それアーネスト様に失礼だろう? それにあちらは最初からお前を指名している」
 義弟の眼差しが鋭くなる。
「え? どうして私を? お姉さまのほうがずっと綺麗なのに」

 レティシアがぽかんとすると、リーンハルトが目を瞬いた。
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