冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「意外に謙虚なんだな」
「リーンハルト、いったい私のことを何だと思っているのよ。それはちょっと失礼なんじゃないかしら」
しかし、義弟はそれを聞き流す。
「光の魔法の属性があって、魔法師になるべく勉強しているお前に興味を持ったようだ」
そういわれるとちょっと嬉しい。苦労して勉強してきたかいがあった。しかし、その目標は自活だったが、それもアーネストの登場であっさりと覆る。自分の意志の弱さをつくづく実感した。
やはり、自活という先の見えない未来に踏み出すのは怖い。それならば、穏やかな性格の人とともに歩むことを選ぶ。アーネストがレティシアを選んでくれたと言うのなら、なおさらだ。
それよりも気になるのは、ミザリーの結婚だ。
「お姉さまが縁談に難色を示すなんて思っていなかったわ、やはりお相手に問題があるのよね。そうでしょ? リーンハルト」
レティシアはどうしてもことの顛末を知っておきたかったので、彼にたたみかける。
「しつこいな。めったなことをいうなよ。ブラウン子爵のトレバー様といえば、社交界でも評判いいし、ブラウン家はうちよりも裕福だ」
「え、トレバーって、あのトレバー様?」
聞き間違いだと思いたい。
「は? あのトレバー様か、そのトレバー様かは知らないが、ブラウン家のご令息だ」
「そんな、どうして」
ショックを受けるレティシアをみて、リーンハルトが不審そうに眉をひそめる。
「知り合い……のわけないよな。第一、レティシアは夜会にもほぼでていないし」
「ええ、ええ、そうね。どなたか存じ上げないわ」
そう言いおいて、レティシアはふらふらとリーンハルトの部屋から出て行く。どこをどう周って自分の部屋まで戻ったか分からない。それほど、混乱していた。
なぜ、婚約者が入れ替わってしまったのだろう。
同じ伯爵家といってもアーネストの家は家格もたかく、前回も前々回もミザリーはそれを誇りにしていた。だからブラウン家に嫁ぐことに納得がいかないのだろうか?
レティシアはその自分の考えに、ぶるり震えた。まさか、今までの恨みの原因は嫉妬? そんな馬鹿なことがあるわけがない。ミザリーはいつでもレティシアより美しくすぐれていて、何もかも持っていた。
(ミザリーが私に嫉妬などするわけはない。今回はきっと大丈夫……)