冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
生意気で気取り屋な十二歳の義弟リーンハルトに注意された。彼は三度に一度はレティシアのテーブルマナーにケチをつけてくる。
「リーン、レティシアは、病み上がりなのよ。それくらいにしてあげて」
ミザリーがフォローを入れてくれる。リーンとはリーンハルトの愛称だ。レティシアは義弟にそう呼ぶことを許されていない。許されたとしてもぜったいに呼ぶものかと思っている。
「そうは言ってもミザリー、レティシアはこの家に来て二年経つのよ。もうそろそろきちんと食べられるようになってもいいんじゃないかしら。ねえ、レティシア」
義母のオデットがレティシアを鋭い目で見る。
「十五歳になったら社交デビューするんだ。礼儀はきちんと身につけろ」
と今度は義父のオスカー。
だから家族そろっての夕食など嫌なのだ。
「私は、あなた達とは生まれだって、育ちだって違う。同じように出来るわけがないわ」
レティシアは、皿の上にが音を立ててナイフとフォークを置くと泣いて席を立ち、食堂から、出て行った。
(私は、彼らとは違う。どう頑張ったってあんなに美しい所作が身につくわけがない。どうしてわかってくれないの?)
自室で、やわらかな羽根布団にくるまりながら、泣く。そばではメイドのアナがレティシアの癇癪をもてあましオロオロとしている。
(いつもそうだ。私だけ仲間外れ、リーンハルトがしつこく文句をつけてくる。そして、ミザリーだけが私を庇ってくれている……)
二十歳の誕生日を目前にレティシアは処刑された。ベッドで目を覚ました時は時間が遡ったのかと思った。でもそんな馬鹿なことがあるわけがない。優しいミザリーがあんなひどい事するわけがない。
この家で味方はミザリーだけ。