冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 終わってみればあっという間の五年間だった。卒業制作を終え、学園生活を終える。ちなみにリーンハルトはまだ学園に残っている。彼は王宮に仕えることなく、学園に残ることを選んだ。いま研究過程に進み勉学に打ち込んでいる。
 きっと彼は良い跡取りとなり、優秀な魔法師となるだろう。

 一体どういう加減でこういう変化が起こるのかレティシアにはわからない。そして、卒業後レティシアはアーネストと結婚する予定だ。
 今回は遊ぶ間もなく、社交もろくにせず、結婚することになった。どうしても出席するようにと言われた夜会でトレバーを一度見かけたが、彼とは一言も話すこともなく、ただすれ違っただけ。

 一度は冷え切った夫婦になり、二度目は仲の良い婚約者同士となり、三度目は無関係な他人。思えば彼にとってはその方が良かったかもしれない。レティシアと一緒になることで彼は不幸になるのだろう。

 整った面立ちと彼の優しい光を湛える緑の瞳が懐かしい。不思議と初めの嫌な思い出よりも、二度目の楽しかった思い出の方がずっと印象に残っている。
 初めて、人に愛された記憶。切ない気持ちを心の奥底にしまい込む。

 そんな感傷を振り切って、アーネストの妻となる。彼はもちろん夫として申し分のない人だ。レティシアは近いうちに彼を心から愛することになるだろう。そんな予感があった。物静かで落ち着いていて思いやりのある人。

 そして、一番心配だったミザリーだが、この結婚に別に何か言って来ることはなく、むしろ祝福してくれている。しかし、彼女の心のうちまでは分からない。絶対に本心をみせないから。
 二十歳の誕生日まで油断は禁物だ。

 無事二十歳をむかえたならば、それから改めてミザリーの事は考えようと思った。


 レティシアは結婚の準備で忙しい日々を過ごしていた。
 そして結婚式の前日急な来客があった。Dクラスで一緒だったマリーナがやって来たのだ。もちろん唯一の友達として、彼女も明日の結婚式に招待している。彼女は卒業後家庭教師として働くことがきまっていた。

「ごめんなさいね。明日結婚式という時に押しかけてしまって」
「別に構わないわ。もう準備はすんでいるし」

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