冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 仕方なくレティシアは、自室に通した。いったいなんだと言うのだろう。ほんの少し胸騒ぎがする。部屋に入って来たのはニーナだった。

「ニーナ、こんな時間になんのつもりなの?」

 嫌な予感がした。しかし、部屋にはコーエン家のメイドもいる。めったなことはしてこないだろう。
「お嬢様申し訳ありません。ですが、ミザリーお嬢様から、どうしても今夜中に手紙を渡すようにと申し付かりまして」
 「手紙?」

 手紙ならば害はないだろうが、それにしても……実家に急病人が出たというわけではないのにどういうつもりなのだろう。

「わかったわ。受け取るから、あなたはもう帰りなさい」
 
 そう言うとニーナが困ったような顔をする。 

「それが、レティシア様が読み終わるのをみとどけるようにとミザリーお嬢様から申し付かっております。あのどうか今ここでお読みいただけませんか? お願い致します」

 一体なんだと言うのだろう。必死な様子で、ニーナが頼むので聞いてやることにした。
 嫌な予感がするが、手紙を読むだけだ。別に害はないだろう。それにニーナには早く帰って欲しい。
 
 レティシアは自室の文机に座るとペーパーナイフで手紙を開封した。便せん七枚ぶんあり、細かい字でびっしり書いてある。これは読むのに時間が少しかかりそうだ。

 何か恨みつらみでも書いてあるのだろうかと暗い気持ちで読み始めたが、その内容はレティシアの結婚を祝うもので、別段嫌がらせでもなかったが、急ぎでもなかった。
 かえって不自然に感じる。なんでこんな緊急でもないものを送り付けてすぐに読むように強要したのだろう。少し神経に障る。

 最後に、追伸とあった。

 ――レティシア、昨日の焼き菓子の味はいかがでしたか? あれは私が特別につくらせたもので、親しい友人のマリーナに届けさせたの。
 あの焼き菓子をあなたが口にしてから、そろそろ一日が過ぎますね。あれには遅効性の毒が入っていてもうすぐ効き目が出る頃。あなたは死にます。分不相応な……

 その先は目の前が暗くなって読めない。きっと罵詈雑言が書かれているのだろう。悔しくて叫ぼうとしたけれど息が苦しくて、指一本動かせない。レティシアは崩れ落ちた。


 どうして?



< 52 / 159 >

この作品をシェア

pagetop