冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
ループ3
目覚めたのは天蓋付きのふかふかのベット。
そしてベッドのそばには心配そうな顔でのぞきこむミザリーとメイドのアナ。
(私はまたもどってきた)
ミザリーを見た瞬間怒りが湧き上がって来て、飛び起きようとした。しかし、病み上がりの体は思うように動かない。
「まあ、レティシア、急に動いては駄目よ。あなたはひどい流感にかかっていたのだから」
そう言ってミザリーが困ったように眉尻をさげ、レティシアの額の汗を拭こうとする。
「私に、触らないで」
ミザリーはレティシアのきつい言葉にショックを受けたようにびくりとする。
今ではそのしぐさすらわざとらしい。
ミザリーが憎くて憎くてたまらない。いったいレティシアが何をしたと言うのだろう。彼女とはほとんど接点を持たないようにしたのに。どうしても殺されてしまう。いったい、何が原因なの?
ミザリーは前回と同じで肩を落として出て行った。レティシアはそれをイライラとしながら見送る。
(いったい、なんだと言うの?)
「お嬢様、そんなこといって、ミザリーお嬢様は、お嬢様を心配してずっとついてらしたのですよ」
(殺されるたびにどれだけ苦しかったと思っているの? 意識を手放す瞬間の絶望と孤独がどれほどのものか。ミザリー、あなたには分からない)
何回目かのアナの言葉を聞き流し、レティシアは何度も深呼吸をして怒りを抑え込む。今自分のやるべきことを考える。
そうだ。まずリーンハルトとの関係改善だ。
今までの態度を詫びに行こう。
レティシアはアナに与えられた果実水をのみ、粥を少し口にした。それから、汗でべたべたな体を拭いてもらう。
まだ、だるい体で立ち上がると、寝巻の上にガウンを羽織る。
「お嬢様、どちらへ」
アナが慌てて、部屋の外に出ようとするレティシアを止める。
「アナ、私は大丈夫です。リーンハルトのところへ行ってきます」
また殺されてしまうなどと思いもよらなかった。
いま何をどうすればよいのか分からないけれど、やるべきことをやるだけだ。
◇
ノックをすると「どうぞ」と入室を促す声がした。義弟の声は記憶のあるひくいものではなく、子供の高く澄んだ声。懐かしい。リーンハルト……。