冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 その後、レティシアの流感はぶり返す。前回とは違う展開だ。
 しかし、頻繁に見舞いに来てくれたのはミザリーではなく、リーンハルトだった。

「リーンハルト。来てくれるのは嬉しいのだけれど。あなたに風邪がうつってしまうわ」

 彼は義父母からもそう言われているはずだ。しかし、その義父母にしてもレティシアの様子を心配して見に来る。 

「大丈夫、すぐに出て行くよ。今日は綺麗な花がさいていたから」

 そう言って、リーンハルトがスイートピーを持ってきてくれた。

「ありがとう本当に綺麗」

 淡いピンクの繊細な花びらに、甘い香り。気持ちが癒される。

「じゃあ、姉さんまたね」

 陽光にきらきらと彼の金髪が輝き、天使のような笑みを浮かべ、部屋から去って行く。もっと早く謝ってリーンハルトと仲良くしていれば良かった。本当に可愛い義弟。
 早速アナが花瓶に花を活けてくれる。

「嬉しいわ。お姉様ではなく、今日はリーンハルトがお花を持ってきてくれたのね」

 するとそれを聞いたアナが、窓辺にさす明るい朝の陽ざしの中で、くすくすと笑う。

「違いますよ。お嬢様、お花はずっと坊ちゃまが持ってきてくださっていたんですよ」
「え?」
「ふふふ、ミザリーお嬢様が持ってきたことにしてくれって言われていたんです。でも、もうその必要もないですね」

――知らなかった。リーンハルト、本当に、ごめんなさい。私は大切にされていたのね。それなのに、どうして今まであなたに何も返さなかったのだろう。いつも自分のことばかりで。
 本当は怒っていなかったのね。傷つけられた貴族としてのメンツを守っただけ。あなたは一族の跡取りなのだから、それは当然のことで。義弟の優しさに、ちっとも気付かなかった。

 レティシアは、ぽろぽろと涙がとまらなくて、アナを困らせた。


 流感がすっかり良くなり、体力が回復すると、レティシアは食堂に降りて行き、みなと食事をともにした。
 
 すると、義父母も義弟も驚きに目を瞠る。

「レティシア、いつの間にお作法が身についたの?」

 前回の努力がここで生きるとは思わなかった。本当に自然に身についた所作だ。突然行儀の良くなったレティシアに家族が不信感をもつのではとどきどきする。

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