冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 ただマリーナに殺意があって、ミザリーに協力したのかどうか、今となっては、もう分からない。

 そして、前回はミザリーと極力拘わらないためにほとんど家に帰らなかったが、どういうわけだか、会わなくなってもミザリーはレティシアを恨んでいるようなので、無駄なことはやめた。それならば優しい義父母に寂しい思いはさせたくない。

 今では彼らが愛情を持ってレティシアに接してくれていたことが分かっている。本当に彼らは娘として受け入れてくれているのだ。

 前回の行動をなぞるような生活を送れば、また同じことが起こるかもしれない。レティシアは癇癪を抑えて、慎重に行動することにした。





 ◇

 レティシアは義父母に勧められるままに十六歳になると舞踏会に出た。ミザリーは相変わらず美しく、殿方にも令嬢にも人気だ。
 
 レティシアは今回、ミザリーの友人たちに囲まれて意地悪されることもなかった。リーンハルトと一緒にいることが増えたせいかもしれない。

 彼といると令嬢達もレティシアに意地悪を仕掛けてこない。

 今世のレティシアは殿方に媚など売らずに、大人しく壁際に陣取った。あのようなことをしても嫌われて疎まれて恨まれていいことなどなにもない。さすがに懲りた。レティシアのせいで揉めた婚約者同士もいたのだから、むしろ申し訳ない。

 あの頃は常に不安で、単純に誰かに愛されているという実感が欲しかった。自分の寂しさを埋めるため、身勝手なことをして随分と周りに迷惑をかけた。

 ぼうっと果実水のグラスを傾けているとリーンハルトが気の毒に思ったのか二、三曲一緒に踊ってくれた。彼とは初めて踊ったが、とても踊りやすい。リードが上手く、安心してついて行ける。さすが伯爵家の跡取りだ。ずっと口うるさくて生意気だと思っていたリーンハルトが今世ではいつのまにか自慢の義弟になっていた。

「姉さん、それほどダンスの練習をしている様にはみえなかったけれど随分上手だね」

 リーンハルトが目を瞠って驚いている。

「失礼ね。私が苦手なのは勉強だけよ。どうせなら、これくらい勉強もできるといいのに」

 自分の飲み込みの悪さについため息をついてしまう。

「何っているんだよ。充分がんばっているし、成績もあがっているじゃないか」

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