冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「で、リーンハルトは、どう思う」
「どう思うも何も、姉さんの気持ちが大事なんじゃないの?」
「あの、でも私、一度は職を持とうと決めて、それで学校に通わせてもらっているのに。学費だってかかっているし」

 レティシアが相談する間にも彼はこんがりと焼けたチキンを綺麗に切り分け、次々に口に放り込んでいく。実習で忙しくてあまり時間がないのだろう。所作は美しいが大分急いでいるようだ。それでも今の義弟は相談に乗ってくれる。

「うちのことは考えなくていいよ。父上も母上も姉さんの幸せを考えているのだから。
 それにブラウン家はたいへんな資産家でもあるし、トレバー氏の悪い噂は聞かない。俺はいい縁談だと思う。
 職については相談してみればいいんじゃないかな? 姉さんは治癒師になりたんだよね。結婚して、臨時雇いという手もある」

「父上も母上も姉さんの幸せを考えている」今世では彼のそんな言葉がストンと腹に落ちる。殺されてしまうかも知れないという恐怖心はあるけれど、家族に愛され今はとても幸せだ。

「そうね」

 結局、決めるのは自分だ。

「ただ、トレバー氏は浮いた噂もないし、良い話だと思う」

 リーンハルトは賛成のようだ。それにこの縁談をことわれば、また前回のようにミザリーと婚約者が入れ替わることもあるかしれない。それだけは絶対に避けねばならない。

 ミザリーはアーネストを愛していたのだろうか。だから、前回のレティシアは恨まれて殺されたのだろうか。それが理由?

 しかし、それだとつじつまが合わない。人生が繰り返す前、ミザリーはアーネストと結婚していたにも拘わらず、トレバーと浮気したのだから。
 レティシアは悩んだすえ、この話を受けることにした。

 それぞれの人生でミザリーに恨まれる内容は違うのだろうか? それともレティシアが気に入らないだけなのか。最初はいじけて僻んで嫉妬した。二度目は遊びまくって殿方にちやほやされ、いい気になり、殺された。今までそれなにりに人に恨まれる理由はあったと思う。だが三回目に関しては身に覚えがない。

(なぜ殺したいほど恨まれたの?)

 一度、ミザリーにじっくり聞いてみたい気もした。





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