冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 ◇

 トレバーとの交際は順調に進んで行った。

 月に二度、彼とは会っている。付き合い始めて三月が過ぎる頃、ブラウン家のタウンハウスに招かれた。行くには勇気がいったが、避けては通れない。レティシアは不安な内心を押し隠し、快くおうじた。

 やはり、そこは記憶にある通りで、レティシアは恐怖を感じたが、以前ほど強いものではなく、何とかやり過ごすことが出来た。きっと大丈夫だと自分に言い聞かせる。
 前は上手く行かなったブラン子爵夫妻とも和やかな雰囲気の中で過ごせた。

 二人で、ブラウン家のバラが咲き誇る庭園を散歩する。
「ねえ、レティシア。今度君を訪ねて学園に行ってもいいかな?」
「え?学園に? 関係者以外立ち入り禁止よ」
学園は学校でもあるが魔法の研究機関でもあるから警備が厳しく家族以外の出入りは禁止されている。
「僕は関係者だよ。婚約者じゃないか」
「確かに、そうですね。でもこうしてお会いできるのにどうして? トレバー様もおいそがしいでしょう?」

「僕らは月二回会っているだろう。だけど君が試験期間に入ってしまうとひと月近く会えないじゃないか。だから、君の好きな焼き菓子でも差し入れにいくよ。それくらいなら君の勉強の邪魔にもならないだろう」

 レティシアはトレバーのその言葉に目を瞠る。
細やかな気遣いが出来る人なのだ。今更そんなことに気付くなんて……。彼を知っている気になっていた自分が恥ずかしい。


 今回のトレバーとの仲はゆっくりと進んでいて、来月初めて二人でカフェに行く約束をした。確か二回目のこの時期は舞踏会に行き、遊んでいた。
 二人は随分違う道を歩んでいる様に思う。だから、きっと大丈夫……。





「ねえ、レティシア、トレバー様とはどう? 上手くいっている」

 シュミット家のサロンで一人茶を飲みぼうっとしていると、ミザリーが入ってきた。彼女は心配そうにそう問うけれど、腹のうちでは、何か画策しているのかもしれない。

 言い知れぬ不安に見舞われる。悔しいはずなのに、彼女が怖い。どうしてもかなわない気がする。それに何を恨まれているのかがさっぱりわからない。
 理由は毎回戻る13歳よりもずっと前にあるのだろうか?

 ミザリーは過去、いずれも「分不相応な」という言葉を口にしていた。ならば、今回の結婚はレティシアにとって「分不相応」なことなのだろうか。

「今のところ順調にすすんでいるわ」

< 61 / 159 >

この作品をシェア

pagetop