冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 レティシアは慎重に答える。

「そう、困ったことがあったら、いつでも相談に乗るわ。だってあなたは私の義妹だから」

 ミザリーの親切な言葉にレティシアの中でもやもやとして黒い感情が姿を現す。

「私の事よりもお姉さまの婚約者を探さなくてはね」

 そんな風に切り返すと、ミザリーがピクリと反応し、瞳に一瞬嫌悪の色が浮かぶ。なぜか、今回のミザリーもまだ婚約者がいない。

「探す必要もないわ。たくさんお話はいただいているから。ただどなたにしようかと迷ってしまうだけ」
「そう、なら私もどなたに決めるかお手伝いしましょうか?」

 いけないと思っても、少しむきなってしまうのが自分でも分かる。ミザリーはパッと扇子を広げると口元を隠す。

「結構よ。社交の場にほとんど出ないあなたに殿方の事はわからないでしょう? そうね。私も婚約の打診があなたのように一件だけしか来ないなら、悩みもしないのだけれど、いろいろと声をかけてくださる方が多くて迷ってしまうの。でもこういう事って自分で決めるべきでしょう? 他人に相談することではないわ」

 ミザリーは美しいし、人にも好かれる。だから、彼女の言っていることは本当なのだろう。しかし、レティシアの婚約が気に入らないのは確かだ。

 そしてレティシアはミザリーにとって他人なのだ。
 彼女と話してますます悶々とした気持ちを抱える羽目になった。





 その晩、レティシアはリーンハルトの部屋を訪れた。

「あの勉強の邪魔をしてごめんね。少し話があるのだけれど」
「なに?」

 リーンハルトは読んでいた書物を閉じるとティーテーブルに茶の準備をさせた。

「お姉さまの事なのだけれど」
「どうかした」
「私の結婚についてどう思っているのかと、本当は自分より先に結婚が決まった私に腹を立てているんじゃないかと思って」
「まさか」
「だって、たくさん縁談が来ているのに、選べなくて決まらないだなんておかしいじゃない。お姉様にはあまりいい条件のお家からきていないの?」

 ミザリーに来ている縁談は、トレバーよりも条件が悪いのかもしれない。レティシアはそんな推測に至った。

「姉さんは何が言いたいの?」

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