冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 リーンハルトの青い瞳に非難の色がうかんでいる。ミザリーは彼にとって血をわけた大切な姉だ。そして、彼はレティシアの事は「姉さん」と呼び、ミザリーの事は「姉上」と呼ぶ。
「父上」、「母上」、「姉上」、レティシアの事は「姉さん」と……。確かに、これは彼に相談すべきことではない。彼らは本当の家族なのだから。

「あ、いえ、ごめんなさい」

 自分一人で、決着すべきことのだ。

「俺に探りなど入れていないで、腹を割って話し合ってみたらどうだ」

 びしりと言われた。リーンハルトには見透かされてしまう。彼の言う通りだ。しかし、ミザリーの腹の中はきっと真っ黒。レティシアは早々に彼の部屋を立ち去った。




 ◇

 今日はバートンのところへ行く日だ。レティシアは学舎を出て、時計塔を目印に研究棟へと向かった。学園の敷地は広く油断するといまだに道に迷う。

 学園生活を送るにあたって、レティシアはバートンのところに月二回通うことが義務付けられている。魔力適性検査では前回と同じようにリーンハルトを頼り、同じ手順を踏んで学園に入った。前回の貯金があるといえ、勉強は苦手なので、バートンの推薦なしでは入れる気がしなかったからだ。

 しかし、前と違うのは彼と少し親しくなったこと、検査の終わりに茶を飲むようになり、他愛のない雑談をするようになった。時にはリーンハルトも一緒に。今日は義弟はいない。彼にミザリーのへの疑問をぶつけて以来少しぎくしゃくしているのだ。

 そのときコンコンとノックの音がした。バートンが返事をすると、ガチャリとドアが開き、一人の男子生徒が顔を出す。

「先生申し訳ありません。来客中でしたか」

 レティシアを見て眉尻を下げる。黒髪に整った面立ち、レティシアには見覚えがあった。
 忘れもしない。

「アラン……」

 震える声で呟く。記憶の中にあるより少し若い。最初の人生でレティシアを守り、命を落とした従者だ。黒髪の少年が戸惑う。

「あの、僕をごぞんじだったんですか?」 

 制服のタイから、彼が上級生だという事がわかる。それなのにレティシアに対して敬語を使う。つまり、最初の人生で平民だった彼はこの時点でレティシアを知っていて。

「あ、いえ、その」
「僕のことは、リーンハルト様から聞いたんですか?」
「え?」
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