冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「リーンハルト様の姉上のレティシア様ですよね」

 レティシアは混乱した。彼はリーンハルトの友人? 

「ええ、初めまして。あなたは私のことをリーンハルトから聞いているのね」


 ――ループ前の記憶がよみがえる。

「ある方から、あなたを守るようにと頼まれました」
「ある方? なぜ?」
「あなたは可哀そうな人だからと」
「私が、可哀そう?」

 ――彼に私を託したのは、リーンハルト?
 だが、あの頃の彼との関係は冷え切っていて……。


「ねえ、あの不躾なことを聞くようだけれど。あなたはリーンハルトの親友なの?」

 するとアランは驚いたように目を見開いて首をふる。

「リーンハルト様はそう言ってくださいますが、僕にとって彼は恩人です」
「そう、よかったら、この後、少しお話をしませんか?」

 バートンの元を辞した後、レティシアは彼を学園のカフェに誘った。放課後とあって閑散としている。この時間リーンハルトは図書館で勉強していることだろう。

「それで、あなたは魔法師を目指しているの?」
「いえ、僕は騎士を目指しています。魔法が使えると有利なので」

 レティシアの従者になったという事は、彼の夢はかなわなかったのだろうか。少し切なくなる。

「それで、あのリーンハルトが恩人って?」
「話せば長くなるのですが」
「大丈夫です。あなたは?」
 アランが、にっこりと微笑んで語りだす。
「僕の家はもうないのですが、もともとは男爵家で父の散財が原因で没落したんです」
「あ、いえ、ごめんなさい。そんなことまで言わせてしまってもういいんです」
 
 いきなりの重い話にレティシアは慌てた。踏み込み過ぎた。するとアランがくすくすと笑いだす。

「ここまで言ったんです。最後まで話させてください」

 そう言って語られた彼の半生は悲惨なもので、結局のところ思い余った母親が息子を連れ湖で入水をはかる。ボートから飛び込もうとしたところ、当時十二歳のリーンハルトに助けられたらしい。

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