冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 レティシアは赤くなる。今になって偉そうなことを言ったと恥ずかしくなってきた。彼にこんなことを言う資格などない。ただアランには何かの犠牲になって死んでほしくなかった。

「そんな事はないです。そう言って頂けて嬉しいです。だが、あなたも少し自分を大切にした方がいい」
 真剣な声でアランが伝えてくる。
「え?」
「ここには人の目も耳もあるのですから、誰かが聞いていて噂にでもなったらどうするつもりです」
「それならば、あなたも」

 するとアランはにっこりと笑う

「僕の家の秘密は秘密でも何でもないでもないですよ。皆が知っています」

 彼の言葉が突き刺さる。
 
 二度目も三度目も彼を巻き込まなくて良かった。
 彼はレティシアと拘わらなかった人生で、自分の夢を果たしたのだろうか……。
 今回は母、息子ともども幸せになって欲しい。


 ◇


 レティシアはぼうっとしながら、学園カフェテラスで一人食事をとっていた。
 かたりと横の椅子がひかれる。リーンハルトだった。彼はこれから昼食のようだ。

「姉さんどうかしたの? 心ここにあらずで、最近成績がふるわないようだね。結婚するのだからそれでもいいのだろうけれど。折角「C」クラスになれたのに「D」クラスに落ちるよ」

 久しぶりに彼にきついことを言われた。先日ミザリーの件で、義弟との間は少しぎくしゃくとしている。

「そうね。がんばらないと」

 ここのところ、また殺されるのではないかと気落ちすることが増えた。殺されるのに、努力していったい何の役に立つのかと、ふと弱気になる。

「あのさ、リーンハルト……」

 どう言葉にしていいのか分からなくて言いよどむ。

「なに?」
「人って、何回も人生をやり直すことがあるのかしら」
「は?」

 リーンハルトが驚いたように目を瞬く。こんな話をすれば、きっとまた彼に嫌われてしまう。だけれど一人で抱えるには重すぎて。

「何度も二十歳目前で殺されて過去に戻ってやり直すの。でも、毎回そこで殺される。どうして殺されるのか分からなくて、それなのにくり返して……。二十歳以降の人生がないの」
「……」

 隣でリーンハルトが黙り込む。彼のアイスブルーの双眸が翳りを見せた。

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