冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「優れた呪術師というのは人の心に働きかけられるのだ。もちろん、強い心を持った者はそうはいかない。だが、弱い人間の嫉妬や憎悪それら負の感情を増幅できると言われている。
 昔の文献にはこんな実験の記録があった。優れた呪術師が被験者にパンを食べさせ、それに猛毒があると信じ込ませる。するとね、本当にその被験者は死んでしまったんだ」

「なんて惨い事を……」

 眉根をよせるリーンハルトにバートンは優しく微笑かける。

「そう、だから、呪いにはいくつか禁術が存在する。残酷なものだからね。そして、昔の呪いの名残は、今教会で売られているアミュレットにある」
「魔よけのアミュレットですか?」
「魔とは呪い。闇魔法と相克にある光魔法を使い強い呪いを弾けると考えられていた。だから、あれには微力ながら光の魔力が閉じ込められている。気休め程度で、呪殺にあらがえるものではないけれどね。
 まあ、君がさっき言っていた殺されて人生を繰り返すという悪夢を見せるのも、強い呪術師ならば可能かもしれない。しかし、随分と陰湿なものだと思うがね」

 リーンハルトは教会に祈りに行くのならば、図書館に書物を読みに行くタイプでそれほど信心深くはなく、アミュレットに興味もなかった。

「君も光属性を持っているのだから、少し興味がわかないかい」
「私のはそれほど強くありませんから、姉なら興味をもつかもしれません」

 レティシアには言っていなかったが、実はリーンハルトは珍しい五属性持ちだ。それもあってバートンと親しくしている。
光属性もあるがレティシアほど強くはなく使い物にはならない。他の属性は平均以上だが、水魔法だけずば抜けているので、専攻していた。

 だが、闇属性は持っていない。不思議なことに闇と光どちらも持っているものはいないのだ。打ち消し合うものだから、同時に持てないと言われている。それならば水と火もそうなりそうだが、実際にはリーンハルトのように両方持つ者もいる。
 そのため、光と闇は少し性質の違うものだと言われ、魔力の根源についてはいまだわかっていない。

 シュミット家の閉架には古の魔導書が眠っている。良くない魔力が封じ込められている書物もあるので、あの空間に行くのはいい気持ちはしないが、調べてみることくらいは出来る。





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