冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「彼女はないね。自分の勉強でいっぱいいっぱいのようだ。余計なことには興味をもたないよ。特に古い本などには全く関心を示さない。レティシアのことはお前の方がよく知っているんじゃないか? 一番仲良くしている」

 仲良くしていると言うより、レティシアは困りごとがあるとすぐに相談しに来るのだ。社交的なミザリーとなぜか距離を置き、婚約についてまでどうしたらいいかなどと聞いてくる。姉妹でそりがあわないのだろうか。確かに性格は真逆だ。

 頑張り屋ではあるが頼りないので、あのような様子で嫁に行っても大丈夫なのか本気で心配になる。婚家で困ったことがあったからと帰ってきて弟に相談するようでは問題だ。頼るべきは夫なのだから。

 別に相談されること自体は迷惑ではない。頼られるのは嫌いではないから。だが、いつも彼女は要領を得ず、肝心なことを言わない。

 レティシアが、少し不安定な様子だったので、つい調べてしまったが、気にし過ぎなのかもしれない。
 呪われている確証があるわけではないし、何より彼女にはしっかりとした婚約者がいるのだから……。

 リーンハルトに出来ることと言えば、危険だと思われる魔術書の上に小さく目立たない紙片を置くことくらい。
 これで誰かが本を抜き取れば分かるだろう。だが、そう簡単に行くだろうか?



 ◇◇◇


 レティシアが学校の図書館で試験勉強をしていると、珍しくリーンハルトがやって来た。食堂で声をかけあうことはあっても学園の図書館ではお互い勉強の邪魔をしないようにしている。
 
 しかも今は試験前だ。珍しい事もあるものだとレティシアは目を丸くした。

「テスト前だとは分かっている。少しサロンで話をしないか、息抜きは必要でしょ」

 気楽な様子で言っているが、どこか彼が緊張しているのが分かる。

「リーンハルトも息抜きすることがあるのね」

 レティシアが目を丸くする。

「なにそれ、皮肉?」

と言って、リーンハルトが苦笑した。時がたち、彼も随分大人になった。ということはレティシアの死期が近づいているということで……。そこで無理矢理気持ちを切り替える。

「違うよ。私もちょうど甘いものが食べたいところだったのよ」

< 72 / 159 >

この作品をシェア

pagetop