冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 何の話かは知らないが、義弟からの誘いは嬉しい。彼のアイスブルーの瞳には困惑の色がある。珍しい。レティシアはひとまず勉強を放り出してついて行った。

 レティシアは紅茶とベリータルトを注文し、リーンハルトはコーヒーを頼む。

「リーンハルト、ここのタルト美味しいよ。食べないの?」
「いらないよ」

 最近のリーンハルトは家でもあまりデザートを食べなくなった。子供の頃は、リーンハルトの分を取って食べたレティシアを怒っていたのに。あの頃は本当に可愛かった。

「姉さん、この間『殺されて時間が戻る』とか言ってたろ」
「え、覚えていたの?」
「うん、少し調べてみた」

 リーンハルトが意外なことを言う。レティシアは目を丸くした。

「なんで? それで結果は?」

 レティシアは前のめりになる。あの時はマリッジブルーで片付けられたのに、彼は気にして調べてくれたのだ。普通なら、戯言と思われても仕方がないことなのに。

「そんな事例は見つからなかった」
「そう」

 リーンハルト言うのならそうなのだろう。レティシアは落胆を覚えた。

「ただね。俺なりに仮説をたててみた。相克する魔法がぶつかれば、ありうるかなと」
「ソウコクって何? さっぱりわからないのだけれど」
「例えば、水魔法と火魔法、魔力量が一緒ならばぶつかれば打ち消されるだろう」
「えーと、そうなの?」

 レティシアが首を傾げるとリーンハルトが苦笑した。

「姉さんの持っている光魔法の反対が闇魔法だろう」
「そう、で?」

 レティシアは良く分からない。彼の言うことは難しすぎる。もう少し具体的に彼に話すことができれば、また違う答えが貰えると思うが……。
 注文したベリータルトとお茶が運ばれてきた。しっとりとしてそれでいてさっくりとしたタルト生地にフォークを刺す。一口食べるとベリーの甘酸っぱさとタルト生地のほどよいサックリ感と甘みが口の中に広がる。

「姉さん、タルトが楽しみなのは分かるけれど、俺の話聞いているの?」

 リーンハルトに叱られた。

「ごめんなさい」

 レティシアは素直にフォークをおいた。

「じゃあ、続けるよ。姉さんは、どこかの闇属性の人間に呪われているのではないかと仮定してみた」
「え? 私、呪われているの?」
 
 恨まれているとは思っていたが、呪われているとは考えてもみなかった。

< 73 / 159 >

この作品をシェア

pagetop