冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
 その所作はまるで王子様のよう。そう、いつの間にか成長して天使から王子様になった。義弟は外面がとてもいい。外面がいいといってもリーンハルトの場合内面が黒いわけではなく……外柔内剛といったところか。繰り返し人生で最高に義弟とは上手く行っているはずだが、やはり彼はレティシアに厳しい。

「ありがとうございます。嬉しいです」
 リーンハルトに代わり前に腰を下ろしたトレバーに礼を言う。彼とはかかわりが深かったのに、このような細やかな気遣いをする人とは知らなかった。繰り返すたびにいろいろな面が見える。

「こうでもしないと試験期間、君とは会えないからね」
「ごめんなさい」

 確かにこの期間は月に二度の彼との茶会は、お休みになる。だからと言ってわざわざ学園まで足を運んできてくれるとは思わなかった。

「いいよ。卒業するまで、君との結婚は待つから」
「はい、ありがとうございます」

 前とは違い、今回はトレバーが早く結婚したがっている。
だが、両家当主の意見は学校を卒業後ということで一致していた。多分結婚の準備もあるだろうから、挙式は卒業後半年から一年後になるだろう。その頃にはレティシアも二十歳だ。


「でも、なんで魔法師の勉強なんて始めたんだい?」

 トレバーの疑問にまさか殺されることを避けるためとはいえない。

「なんというか、私、自分に自信がなくて」
「え?」

 驚いたようにトレバーが新緑色の目を瞬く。

「君はそんなに美しくて、魅力的なのに」

 二回目の人生でどんな男性でもこれくらいのお世辞は言うことを知った。

「そんなことないです。私が、シュミット家の遠縁で養女っていうのはごぞんじですよね」

 それにトレバーが頷く。

「最初、あの家に行ったときびっくりしたんです。天使のようにかわいい姉弟がいて。そのうえ、彼らは頭もいいし、礼儀作法も完璧だし。
 あの家に入ったばかりの頃は私も彼らに追い付こうと頑張ったのだけれど。全然上手くいかなくて、周りにやつあたりしたり、いじけたりでとても迷惑をかけたんです。
 でもこれではダメだと思い、もう一度お作法を学びなおして。学校にも通うことを決めたんです。お義父様も私が自信をつけるにはいいのではないかと賛成してくださって」

 思い返してみると、こういうことをトレバーに今まで話したことはなかった。

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