冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「そう、僕は別にレティシアの礼儀がなっていないとは思えない。ましてや君が君の姉弟に劣るだなんて思ったことは一度たりともないよ。むしろ君のほうこそ月の女神のように美しい」

 トレバー言葉に赤くなる。いくら何でも褒め過ぎだ。二巡目の時よりもずっと彼に思われているように感じる。
 それに礼儀作法に関してはこの人生が四回目だから。

「ありがとう。トレバー様はやさしいんですね」
 するとトレバーが苦笑する。
「そうじゃない。心からの言葉だよ。……その、もしかしてリーンハルト様がレティシアの事を劣っているとかいうの?」

 シュミット家よりもブラウン家の家格が低いせいか、トレバーはリーンハルトに敬称をつける。

「え? リーンハルトが、まさか!」
「さっきもお説教されていたようじゃないか」

 トレバーが心配そうに言う。

「違います。あれは義弟流の激励なんです」
「そう……ならいいけれど」

 そう言ってトレバーが淡く微笑む。だが、どこか心配そう。

「むしろ、義弟は面倒見が良すぎるくらいです。時々勉強を教わってます。ほんと何をやらせても完璧で、姉らしいことなんて全然したことないんです」

「そうなんだ。でも姉弟でわざわざサロンで茶を飲むなんて、随分と仲がいいんだね」
「え? そうですか。リーンハルトは私よりミザリーお姉さまとの方が仲がよいと思いますけど」
「ふーん、そうかな? 僕には君たちが随分と親しげに見えたけれど」
「それは子供の頃から一緒に育った義弟ですから」
「僕には兄弟がいないから、よく分からないけれど、羨ましいよ」

 そうと言ってトレバーが笑う。少しの時間だったが、婚約者と過ごしレティシアの気持ちは晴れた。いずれはトレバーとリーンハルトが仲良くなればいいなと思う。
 






 試験の結果が学園のエントランスの掲示板に張り出された。
レティシアはぎりぎりで何とか「C」クラスへ残留できるようだ。今回は集中力に欠けていて危ないところだった。

 そして、ついでに義弟の成績を確認する。彼は最終学年で有終の美を飾っていた。首席で卒業だ。この後、専科に行くことが決まっている。

 リーンハルトもこの結果を見に来ているはずなのだが、彼が見当たらない。生徒でごった返すエントランスの中でリーンハルトの姿を探して回った。背の高い金髪を見つければいい。
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