冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「なにか推測がたったら、僕にも知らせてね」

 バートンが気軽に声をかけてくる。できれば、彼に研究してもらいたいくらいだ。




 久しぶりに研究棟にいるリーンハルト訪ねて行った。彼は一足も二足も先に学園を卒業して専科に進んでいるのだ。

「え? 姉さん何しに来たの?」

 レティシアがここを訪ねるのは初めてだ。リーンハルトの驚いた顔を久しぶりに見る。

「ねえ、リーンハルト、黒魔術の事について教えて」

 そういうと彼が顔をゆがませる。

「バートン先生から聞いたのか。やめとけよ」

 リーンハルトが珍しく乱暴な口調で言う。前回までの彼を思いだして懐かしい。

「そんな事言って、あなたは調べているんでしょ?」

 問い詰めるとリーンハルトが諦めたようにため息を吐く。

「姉さんがあまりにもおかしなことを言うから、前にちょっと調べてみただけだよ」
「それで、どうだったの?」

 レティシアは勢い込んで聞いてみる。

「大して参考にならないと思うよ。この国でも昔、呪いが横行していたらしい」
「ああ、王族がいまだに呪われることがある、というお話は聞いてきたわよ」
「そっちじゃなくて、ひと昔前のはなし、この国でも呪いが認められていた時代があったんだ」
「まあ、そうなの?」
「敵国の王族を呪うという目的でね」
「じゃあ、呪いを解く方法もあるのよね?」

 レティシアの胸は期待に膨らむ。

「まあ、教会で売っているアミュレットは効くらしいって噂だけれど。解呪なんて文献には残っていないよ」
「なんで?」
「研究する者がいないからじゃない? 呪いは扱いに気を付けなれば、罪に問われるからね。リスクを冒してまで研究する人がいないのかも。高位貴族でも誰かを呪えば死罪だし、もっとも高位貴族の闇属性持ちなんて聞いたことないけれどね。呪いは庶民の専売特許だ」
「ねえ、リーンハルト、あと一つ聞きたいことがあるのだけど」
「なに?」
「あのね。ミザリーの魔法属性は何?」

 リーンハルトは黙り込む。
 
「本人に聞いたら、と言いたいところだけれど。姉さんがおかしな妄想に囚われても困るから言っておく」

 彼のアイスブルーの瞳が温度を下げた。多分、とても怒っている。

「姉上は魔力持ちではないんだよ」
「は? なんでよ?」

 なんでも完璧でレティシアより上な彼女に魔力がない?

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