冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
「貴族だからといって、皆が皆魔力を持っているわけではないんだよ。姉さんの婚約者殿もないだろう? だからと言ってそれが不利にはたらくわけではないことは分かっているよね?」
「確かにそうね」

 彼の言う通りだ。王宮勤めでも職種によっては魔力が必須だが、たいてい不利になることはないし、女性の場合は光属性だと結婚にやや有利だというだけだ。

「呪い」という答えが見つかった気がしたのに、またすり抜けてしまった。ミザリーが魔力持ちではないという事は、闇属性ではなくて……。その事実に途方に暮れる。

「ねえ、リーンハルト。なら私は今地獄にいるのかしら?」

 レティシアがポツリと呟く。

「姉さんは、婚約者と上手く行ってないの? だからそんなことを言うのか?」
 
 リーンハルトが鋭い眼差しを向けてくる。

「いえ、私は、そんなんじゃあ……」
「なら、何がそんなに不安なんだ。少しおかしいよ。本当は結婚したくないんじゃないの? そんな事ではトレバー氏にも失礼だ。はっきりしろよ」

 義弟がイラついた口調で言う。確かに彼の言う通りだ。

「不安……、そうなのかしら」

 レティシアは自分でも良く分からなくなる。二十歳が近づくにつれ怖くなるのだ。いままで殺され続けてきたが、今回もミザリーがそれほどレティシアを嫌っているのかは分からない。どう先手を打ったらよいのだろう。やはりあまり接触しないという答えしか見つからない。

「気になるのなら、自分で黒魔術の事について徹底的に調べたらどう? うちの閉架に古書が保存されている」
「え?」
「黒魔術に関する本だよ。気が済むまで自分で調べればいい。俺は知らない」

 そう言って今後こそ義弟は口を噤んでしまった。

 レティシアはリーンハルトに言われた後、家に戻り閉架を調べにいったが、古語ばかりで読み下せなかった。
 そのうえ、義父オスカーには心配をかけてしまった。

 でも、ここで諦めるわけにはいかない。次があるかどうかも分からないのだから。



 ◇

 レティシアは最終学年になった。

 現在十九歳、死はもうすぐそこまで近づいている。今回ばかりは違う、とは思えなかった。自分ではいろいろあがいたつもりだったが、結局何も分からずじまい。今のところ殺される前兆はないが、それは前回も同じだ。



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