冤罪で処刑され、ループする令嬢 ~生き方をかえてもダメ、婚約者をかえてもダメ。さすがにもう死にたくはないんですけど!?
カウントダウン
二十歳の誕生日の前日、レティシアはいま学園にいる。実はもう二か月前に卒業して、教会で働くべく研修を受けていた。トレバーとの結婚まではまだ半年ある。
ひと月前バートンに頼み込み、夜だけ特別に作業棟四階を使う許可を得た。アミュレットを作るためだ。もちろん、それは教会でも売られている。
だが、レティシアは自分の価値に気付いていた。彼女の光魔法は強力だし、魔法師学園の卒業生だ。それならば、より強力なアミュレットが作れるはず。これが呪いだとしたら、何とかそこから逃れたいと一縷の望みをかけた。
彼女なりに古語を調べ、魔術に関する専門書を読んだ。しかし、結局その解釈は難しく、理解はできなかった。
だからと言って手をこまねいているわけにはいかない。試行錯誤をくり返しアミュレットの制作を続けた。
最初は誕生日の前日に処刑された。その後はやはり誕生日の数日前から、数か月前で……。
だから、今日が誕生日の前日だからと言って油断は出来ない。
義父母とは上手く行っている。ミザリーとはほとんど没交渉で、向こうもレティシアに関わってこようとしない。だが、彼女は未だ婚約していなくて不気味だ。今度もトレバーを奪うつもりなのだろうか。
レティシアは首を振ってそんな考えを払う。今は死なないことに意識を集中させるべきだ。
気休めかも知れないが、アミュレットが完成すれば、これに守られて殺されるループから抜け出せるかもしれない。試作品はいくつもできているが、満足していない。思うように上手く光魔法をアミュレットに閉じ込められないのだ。
夜もだいぶ更けてきた。作業棟に残っているのはレティシア一人だけ。何度作っても納得がいかないというより、ただ恐怖心を拭うために作っている。二十歳の誕生日が来るその瞬間まで作り続けようと決めた。