Triangle Love 6 ~ 両手の花には罪と罰 ~
翌日、寝不足のまま登校した。

昨日は全く眠れなかった。

まぶたが重すぎたけど、午前中の授業は何とか乗り切った。

その昼休み、教室の端の方で、昼食を終えたクラスの男子グループによる雑談が始まった。

人数はオレ込みで8人〜10人(数えてないから分からない。)くらい、トーク内容は学内の女子で誰がかわいいと思うか。

盛り上がってはいるけど、表面上は仲が良いというだけのグループなので、お互いに好きでも嫌いでもないというのが透けている。

卒業したら誰とも会わないことが、既に確定している。

ここまで中身のない話を楽しんでいるフリをするというのも、青春の醍醐味と思えば素敵な気もしてくる。

グループ内で仕切る役の奴が話を回している。

『なるほどなー。おめー、誰よ?』

『俺はE組のユイちゃんっしょ。黒髪ロングの正当派。間違いない。』

『マジそれ。ありゃみんな好きだわ。』

『わかるー。』

『E組ならヤヨイちゃんってコも、まぁまぁかわいくない?』

『いやいや。あのコはやべぇって。』

『そうそう。声うるさいし。後さ、あのコのまわり。イカつい奴らがうろうろしてんだよ。』

『それはヤベー。』

『マジか。おめーは?』

『…。』

『…おーい。ジン。』

『あ、オレか。えー誰だろ?探しとく。』

『そ。おめーは?』

『マニアックかもだけど、A組の…。』

寝不足のせいであまり聞いていなかった、というよりは正直なところ、この話題に乗る気がない。

クラスメイト達には、オレに彼女がいることを教えていない。

例外なく、誰にも教えていない。

休み時間も気を抜いてはいけない。

何気ない一言が破滅を招く、というのはよくある話だ。

それに陰では、ジンってノリ悪い、と言われていることも知っている。

なおさら、余計なことを言う必要が無い。

キーンコーンカーンコーン。

しばらくして、休み時間終了のチャイムが鳴った。

グループはそれぞれの席に戻った。

あまり楽しくない会話を聞いたおかげで、目が少し覚めた。

内容というよりは、主に奴らの声量のおかげだ。

午後の授業も気合いで乗り切ろう。
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