酩酊メロウ
「でもいいです、おかげで憂雅さんの貴重なシーンを撮れました」


満面の笑みでイチオシの1枚を見せつけてきた澪。
うわぁ、たるみきったにやけヅラ。こんなの組の連中に見せたら絶対笑われる。

澪が嬉しそうな顔するもんだから消せとは言えないが。


「澪はタバコ吸ってる男、嫌じゃねえの?」

「嫌いです、ヤニ臭いの苦手」

「けど俺はいいの?」

「憂雅さんの喫煙シーンは絵になります」

「禁煙中なのに、なんでそういうこと言うんだよ。調子乗ってヘビースモーカーに逆戻りじゃねえか」


タバコ吸って叱られたことは多々あるが、褒められたのは初めての出来事だった。
澪ちゃんよ、最近俺のこと甘やかしすぎだろ。


「ヘビースモーカーは嫌ですけど、たまにならいいんじゃないですか?」

「たまにで済まないから我慢してたんだけどな」


最後の煙を吐き出し、灰皿代わりのコーヒーの空き缶に吸殻を落とす。
一連の動作を見ていた澪は、首を傾げて俺に近づいてきた。


「何かありました?」


大嘘つきな俺と1年一緒に過ごした澪は、本音を嗅ぎとってわずかな変化に異変を感じるようになった。
ほんっと、俺のこと大好きだよな。俺もそんな澪が好きだけど。
< 100 / 120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop