酩酊メロウ
「憂雅さん!?」


澪は驚いてビクッと体を震わせる。
お構いなしに抱き寄せて谷間に顔を埋めてみた。
少し顔を傾けて胸にぴったり耳を付けると、規則正しい脈拍が聞こえてくる。

これ、いいかもな。満ち足りた気分になる。
胸いっぱいに吸い込んだ煙を吐き出した時の安堵感に似ている。


「あー、これだわこれ、ぜってぇこれだわ」

「あの、何が?」

「ストレス緩和策」


谷間に顔を挟んだまま会話を続ける。そろそろ嫌がってもいいのに、澪は俺の頭を優しく撫でてきた。


「いつでもどうぞ。私はそのためにいるから」

「とことん甘えさせてくれるな、最高かよ」

「憂雅さんが頑張ってるの知ってるから、私の前では頑張らないで」


実直な澪の、飾らない励ましの言葉。なぜだか泣きそうになった。
泣いたらダサいから、そんなみっともない姿見せねえけど。


「うわー、好き!」

「そこで喋らないで、くすぐったい」


そもそも、谷間に顔挟んだまま告白なんてカッコつかないにも程がある。
傍から見ればかなりだらしない姿。それでも顔を上げれば澪は幸せそうに笑ってる。
弧を描く口に唇を重ね、舌を入れたキスをすると「苦い」と笑われた。



『ヘビースモーカー』END
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