酩酊メロウ
今日は、1週間家を空けた憂雅さんがやっと帰ってくる。
“今から帰る”と30分前に連絡を受けてからずっと玄関の周りをウロウロしていた。
まだかな、そろそろ帰ってきてもいいはずなんだけど。

とその時、玄関の鍵が解錠され、ドアがゆっくり開いた。


「憂雅さん、おかえりなさ……誰!?」


裸足のまま抱きつこうとすると、目の下にクマのある、ヒゲ面の男性がぬっと現れて思わず大きな声が出た。


「誰はねえだろ」

「あっ、やだなぁ冗談ですよ。おかえりなさい、憂雅さん」


声と瞳の色で憂雅さんだと判断したけど、びっくりするくらいやつれていて別人みたいだった。
口ヒゲと顎ヒゲが伸び放題で実年齢よりかなり老けて見える。
お疲れのところ申し訳ないけど、夜に出歩いていたら職質されそうな見た目だなと思ってしまった。

一瞬憂雅さんと分からなかったことについて訂正すると、憂雅さんはゆっくり口角を上げた。


「相変わらず嘘下手だな、ただいま」


ヒゲで怪しさ満載だったけど、その笑顔は格別だった。
普段よりギャップと色気がプラスされて心臓が高鳴る。
愛しそうなその笑みを見つめていると、いつの間にか吸い寄せられるようにキスをしていた。
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