酩酊メロウ
「ちょっと、憂雅さん」

「琥珀も真実を知られて不安なら、いっそ近くに置いてしまえばいい。それと、個人的に家政婦欲しかったから」

「家政婦?初耳だけど」


ユウガさんの思いつきだったのか、杏ちゃんの綺麗な琥珀色の瞳が揺れて動揺していた。
私も初対面の人に家政婦になってくれと言われるとは思わなかった。


「事務所がきったねえのよ。何回注意して掃除させても全然綺麗にならねえから、どうしたもんかと思ってさ」

「そんな理由で?」

「若頭の事務所だから、荒瀬のお偉いさんがアポなしで来て困るんだよ。澪ちゃん、掃除は得意?」


不意にユウガさんと目が合った。
明るいところで見る彼の瞳は、色素の薄いヘーゼルカラーだった。杏ちゃんの瞳とはまた違って綺麗だ。


「は、はい。掃除好きです」

「ちなみにメシ作れる?」

「ご飯作るのはもっと好きです」

「決まり、今後澪ちゃんは俺の家政婦ってことで」


トントン拍子に進む話。だけど背に腹は変えられない。
闇金に捕まって奴隷のような扱いをされるくらいなら、家政婦なんてかわいいもんだ。


「俺は鳴海(なるみ)憂雅(ゆうが)。これからよろしく」

「はい、よろしくお願いします。鳴海さん」

「憂雅って呼んで。俺も名前で呼ぶから」

「分かりました、ユウガさんとお呼びしますね」


挨拶を交わして、差し出された大きな手を握って握手をする。
こうして私は借金の代わりにヤクザの家政婦になるという、とんでもない契約を交わしてしまった。
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